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新型チェロキー徹底試乗記 Vol.02 トレイルホーク “本気” のオフロード性能

第2回:トレイルホーク
“本気” のオフロード性能

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試乗前は先入観のかたまり…
みなさんこんにちは。河村です。
新型チェロキーの試乗記は最も印象的だったオフロード性能からお伝えしましょう。
前回、私は「自分のフィルターを真っ白にして新車を見つめよう」と言いました。
そんな私が恐らく、試乗会に来たジャーナリストの誰よりも
新型チェロキーの走破性を疑っていたかもしれません。
試乗前は正直、こう考えていたのです。
「チェロキーもついに四輪独立懸架サスになったか。
 オフロードは走れても “たしなむ” 程度だろう」
本格クロスカントリー4×4のサスペンションは
そのオリジンとも言えるウィリス・ジープ(1941年)の時代から長らく
前後リジッドアクスルでした。
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※写真は2012年の「ジープの機能美展」で撮影
リジッド(rigid)とは固定していて動かせないこと、
アクスル(axle)とは車輪の心棒、車軸のことです。
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写真のように左右のタイヤが1本棒でつながっているのが特徴です。
このサスの利点としては構造が単純で耐久性に優れること。
オフロードの凹凸地形でシーソー効果が得られること、などが挙げられます。
シーソー効果という用語はありませんが
右のタイヤが持ち上げられればそれに釣られて左のタイヤが押し下げられる
そういう動きをイメージで説明しています。
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この動きが前後のサスで逆方向に起きる究極の姿勢が上の写真です。
前後のサスペンションが大きく伸び、大きく縮み、
地形の凹凸をしっかり捉えているのがわかるでしょう。
これが独立懸架の足ではこうはいかず、
右のタイヤがどんなに持ち上げられようとも左のタイヤには関係がなく、
単純に車重を支える動きしかしないのです。
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新型チェロキーのフロントサス(上)とリアサス(下)。左右が独立していて、シーソー効果は得られません。
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縮んだ足の反対側を伸ばすように働かないため、ラングラーより地面から浮きやすくなってしまいます。
メリットとデメリット、オンロードとオフロード
でも片方のタイヤの動きが反対側に伝わるということは逆にデメリットでもあります。
また、リジッドサスはどうしてもバネ下荷重が重くなります。
バネ下荷重とは読んで字のごとくクルマのバネ下にある構造物の重さのこと。
ラングラーのリジッドサスでは太く重い構造物(アクスルやデフ)があり、
これにタイヤとホイールを合わせた重さがコイルスプリングより下にあります。
ところがチェロキーの独立懸架で
コイルスプリングより下にあるのはタイヤとホイールくらい。
アクスルやデフはバネより上、ボディー側に位置しているのです。
いかに「バネ下荷重」が軽いかおわかりいただけると思います。
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新型チェロキーのリアサス(右)とラングラーのリアサス(左)。サスペンションアームは「ばね下荷重」に含まれないので、チェロキーのばね下荷重はタイヤとホイールの重さだけです。対してラングラーは左右のタイヤを結ぶアクスルとデフが全て「バネ下荷重」に含まれます。両車の重量差は歴然です。
※ラングラーの写真はノーマルではありませんが構造は同じです。
スプリングやダンパーが制御する相手、
つまり地形に応じて暴れる相手が軽いわけですからその恩恵は計り知れません。
操縦性、安定性はもちろん乗り心地に至るまで、
日常出会うほとんどのシチュエーションでは独立懸架に軍配が上がります。
悪路でもバタバタ暴れにくいので高速ダートでも独懸のほうが有利です。
もともチェロキーは前後リジッドサスのクルマでしたが
時代とともにオンロードの操安性や乗り心地がより強く要求されるようになり
先代KKチェロキーではハンドリングをつかさどる前輪を独立懸架に、
後輪はリジッドのままで極悪路の地形に対応できるようにしていました。
これが、今度の新型チェロキーでは前後独立懸架になったのです。
これが、より一層の「オンロード化」を意味することはもうお分かりでしょう。
普通にこのクラスのSUVを買う人であればむしろ歓迎すべきことですが
オフロード四駆ばかり扱ってきた私には「退化」に見えたわけです。
では、新型チェロキーは実際に悪路でどんな走りをしたのか
映像で見てみましょう。

いかがでしょう?
なんだかものすごい所を平気で走っていますね?
正直、私も驚きました。
1. まず、ローレンジをしっかり備えてきたこと。
2. 次に、前後の対地アングルが優れていたこと。
3. そして電子制御のトラクションコントロールが優れていたこと。
この3つのポイントによって
新型チェロキーはかなりのオフロード性能を示したのです。
このうち、今回はローレンジについて解説しておきましょう。
ローレンジとは? どんなところで使うのか?
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※写真は米国モデルです。
通常、クルマは5速とか6速のトランスミッション(変速機)が積まれていますね?
本格オフロード4×4ではこれにもうひとつの変速機を組み合わせて、
5速を倍の10速に、6速を12速にしてしまいます。
通常オンロードで使う6速にもうひとつ減速ギアを組み合わせることで
オフロードをゆっくりパワフルに走れる、別の6速を用意するのです。
これは多段式の変速ギアを持つサイクリング車と同じ構造です。
例えば後輪の軸に6段の変速ギアが仕込まれているとします。
これに加え、前側のペダル軸にも2段の変速ギアが仕込まれていると
ギアの段数は 6 × 2 = 12段 ということになります。
そして、低いギアは坂道を登る時に、高いギアは高速で走る時に使いますね?
最も低いギアではたくさん漕いでもなかなか前にすすみませんが
急な坂道をモノともしないパワーを発揮できるはずです。
より詳しく知りたい方は、こんなホームページもご参考に↓
http://www.cso.co.jp/chishiki/all004.html
オフロード4×4のローレンジも同じです。
通常の「ハイレンジ」に加え「ローレンジ」という低いギアを備え
オフロードでゆっくり、トルクフルに走ることができるようになるわけです。
そのローギアが備わっていることがチェロキーの伝統であり
他のSUVと一線を画すポイントでもありました。
それが、引き続き採用されたのです。
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こんなSUV、いままで存在しなかった
ローレンジの継続採用は当たり前のように見えて、実はとても大変なことです。
なぜなら、新しいチェロキーは横置きエンジン+FFベースの4×4であり
この手のSUVにローレンジを採用した前例がないからです。
もう少し詳しく説明しましょう。
やはりウィリスジープの時代から長らく、
本格4×4のパワートレーンはフロントエンジン、リアドライブのFR車が基本でした。
縦置きに積まれたエンジンからミッション、プロペラシャフト、リアデフへと続く
一直線の流れの真ん中で前方に分岐したプロペラシャフトで前輪を回していたのです。
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エンジンから駆動系まで全て縦置きに配置したジープラングラー
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エンジンを横置きに配した新型チェロキー
ラングラーはもちろんグランドチェロキーもこの方式。
ランドローバーやランドクルーザー、パジェロといった本格4×4も
ほとんどがこのレイアウトです。
でもエンジンルームを短くキャビンを長くできるというパッケージング上の利点から、
エンジンを横置きに配置しすぐ下にある前輪を回す
フロントエンジンフロントドライブ(FF)の乗用車が増え始めました。
そして4×4の世界にもFFをベースにするSUVが増えていったのです。
CR-VにRAV4、エクストレイルにアウトランダー、デリカD:5にCX-5、輸入車ではアウディQ5にVWティグアン、ボルボのXCシリーズ3兄弟など、町中で目にするSUVの多くがFFベースの4×4になってきました。
ジープではそ新型チェロキーのほか、パトリオットやコンパスがこれに当たります。
ところがこのように増えてきた横置きエンジン+FFベースの市販4×4車で
オフロードでリアのタイヤに100%のトルクを伝達して無茶して走って大丈夫!
というクルマは実はそんなに多くありません。
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それどころかローレンジの高いトルクでリアデフをブン回しても大丈夫!
などという市販SUVはこれまで存在しませんでした。
ローレンジはゆっくり走れるかわりに、とても大きなトルクが発生します。
その大トルクに耐えられるリアデフを真剣に導入しよう
などと考えるメーカーがなかったからです。
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ローレンジに対応した新型チェロキーのリアデフ(下側)
ジープブランドの意地でしょうか。
ジープとして将来のSUV像を提案した「挑戦」ともいえるでしょう。
さらに追い打ちをかけますが、
このトレイルホークグレードにはリアデフに「デフロック」が標準装備されます。
デフロックは左右のタイヤの回転差を全くなくしてしまう機構です。
その働きと効用についてはまた次回ご説明しますが、
これは駆動系にさらなる負担を強いる機構なのです。
ローレンジ+デフロック。
オフロードでは鬼に金棒ですが
その分、リアデフを相当頑丈に造らないといけません。
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有り体に言えば、今まで我々の前に現れたFFベース4×4の
リアデフの設計強度はそんなに高くはないのです。
つまりカタログ上は4×4でも、強度は “それなり” だったのです。
少なくともこれらのSUVと新型チェロキーを同列に論じることはできません。
ある意味とてもエポックメイキングなクルマを目の当たりにした
と言えるのです。
ちなみに新型チェロキーのハイレンジギアは9速です。
これは、ハイ/ロー合わせて18速のギアがあることを意味します。
え? そんなにあったら選ぶのが大変ですって?
大丈夫。用意されているのはAT車だけ。
それに走りながらハイ/ローを切り替えることは不可能ですから。
オフロードを走る時だけ、ローレンジにすればいいのです。
さて、次回はトラクションコントロールについて
驚きの新機能をお届けしましょう。お楽しみに!
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